脳梗塞のリハビリは退院後いつまで続ける?保険の期限と、やめどきの決め方|認定理学療法士監修
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脳梗塞Labo マヒリハ 柏の葉店店長 原田 涼平理学療法士 認定理学療法士(脳卒中)
脳梗塞Laboマヒリハ柏の葉店店長の原田です。地域でお困りになっている方や不安を感じている方を一人でも多く救えるよう、保険外だからこそできる量と質を担保したリハビリを行っております。リハビリをご希望の方はお気軽にご連絡ください。
この記事のまとめ
保険で受けられるリハビリには期限があります。入院は150〜180日まで、外来は発症から原則180日までです。ただし、これは保険の決まりで、体が変わる期限ではありません。発症から半年以上たった人でも、歩く力や腕の動きが変わったという研究があります。「いつまで」は月数ではなく、「何ができるようになったら区切るか」で決めるのが良いと考えます。
保険のリハビリは、入院で150〜180日、外来で発症から180日まで
脳梗塞や脳出血のあと、保険で受けるリハビリには日数の決まりがあります。場所ごとに数え方が違うので、図1にまとめました✍️
図1保険でリハビリを受けられる期間
回復期の病院に入院入院した日から150日以内(重い場合などは180日以内)
▲ 回復期の病棟に入院した日
外来(医療保険)発症した日から原則180日まで
▲ 発症した日
訪問・通所(介護保険)日数の期限はなし
入院と外来では、数え始める日が違います。帯の長さは目安です。
外来の180日は、退院した日からではなく発症した日から数えます。入院が5か月続いた人は、退院した時点で残りが1か月ほどです。
要介護・要支援の認定を受けている人は、180日を過ぎると医療保険の外来リハビリは原則として終わり、介護保険のリハビリに移ります(2019年4月から)。状態によっては医療保険で続けられる場合もあるので、退院前に主治医へ 「180日を過ぎたあとはどうなりますか」 と聞いておけると良いです🙆
期限があるのは保険の枠で、体の変化ではない
「半年を過ぎたら良くならない」と言われることがあります。研究を見ると、そうとは言い切れません。
発症から半年以上たった700人で、歩く速さに小さな差が出た
発症から6か月以上たった人を対象にした15の試験(合計700人)をまとめた研究があります。理学療法を受けた人たちは、受けなかった人たちより、歩く速さが秒速0.05メートル、歩ける距離が20メートル伸びていました(Ferrarelloら 2011年)。この差を図2に示します。
図2発症から半年以上たった700人の、歩く力の変化
歩ける距離
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理学療法を受けた人たちは、20メートル長く歩けました。
歩く速さ
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秒速 +0.05 メートル
10メートル歩く時間が、少し縮む程度です。
理学療法を受けた人たちと、受けなかった人たちの差です(Ferrarelloら 2011年)。差は大きくありません。
差は大きくありません。秒速0.05メートルは、10メートル歩くのにかかる時間が少し縮む程度です。それでも「半年を過ぎたら変わらない」わけではなかった、というのがこの研究の結論です。
歩ける人には、息が上がる強さの歩行練習がすすめられている
理学療法の診療指針は、発症から6か月を過ぎて歩ける人に対して、中くらいから高い強さの歩行練習を強くすすめています(Hornbyら 2020年)。一方で、同じ指針は、座った姿勢や立った姿勢でのバランス練習だけでは、歩く速さや距離は伸びにくいとしています。
この指針のもとになった研究は、大きな手助けなしで歩ける人が対象でした。歩くのに介助が必要な人に、そのまま当てはまるとは限りません。
腕は、3週間で90時間の練習をした224人の報告がある
発症から1年半ほど(真ん中の人で18か月)経過した224人に、3週間で合計90時間の腕のリハビリを行いました。腕の動きの点数は、真ん中の人で26点から、6か月後には37点になっていました(54点満点。Wardら 2019年)。
この報告には、リハビリを受けなかった人との比較がありません。効果の大きさは、これだけでは確かめられません。加えて、3週間で90時間は1日およそ6時間で、 週1回40分のリハビリとはまったく別の量です。
リハビリの時間を増やした20の試験(合計2,686人)をまとめた研究では、日常の動作にはっきり差が出たのは、発症から6か月以内に行った試験でした(Kwakkelら 2004年)。半年を過ぎてからは、より多くの量と、目的をしぼった内容が必要になると考えます。
退院後にリハビリを続けた人と続けなかった人で、1年後が違った
リハビリ病院から自宅に帰った157人を1年後に調べた研究があります。日常の動作の点数は、保てた人が43.3%、上がった人が23.6%、下がった人が33.1%でした(Paolucciら 2000年)。割合を図3にまとめました。
図3自宅に帰った157人の、1年後の日常の動作
Paolucciら 2000年。
退院後にリハビリを受けていたのは、157人のうち46.5%です。 受けていた人は点数が上がることが多く、受けていなかった人は下がることが多い 、という関係がありました。
過去の数字で、現在の日本の制度とも違いますが、退院後も専門的なリハビリを継続することが、機能の維持や更なる改善につながる可能性があります。
「いつまで」は月数ではなく、できるようになりたい動作で決める
現場で「いつまで続ければいいですか」と聞かれたとき、私は月数では答えていません。先に「何ができるようになったら区切りにしますか」を一緒に決めます。
たとえば
「ベッドから起き上がって車いすに乗り移るまでの介助量を減らす」
「近所のスーパーまで歩いて行って帰ってくる」
「マヒした手でペットボトルを持ちフタを開ける」
など。
場面まで決めると、練習の中身が決まり、区切りも見えます。 「歩けるようになりたい」のままだと、区切りは来ません。もう一つ見ているのは、その動作を、私たちがいない自宅で、自分の体を悪くしないやり方で続けられるかどうかです。リハビリの中でできても、家で元の動き方に戻ってしまうなら、まだ区切りではありません。
マヒリハでは、リハビリの進め方を4つの時期に分けています。姿勢を整える時期、動作を整える時期、再発を防ぐ時期、そして自分で保つ時期です(図4)。お体の状態や経済的側面も踏まえて、目標や頻度は擦り合わせながらリハビリを行なっていくことを心がけています。
図4マヒリハでのリハビリの進め方(4つの時期)
整える
整える
防ぐ
保つ
今日からできること3つ
1. 発症した日から180日目を、カレンダーに書く。退院時にもらった書類に発症日が書いてあります。外来リハビリの期限がいつ来るかを、先に知っておきましょう。
2. できるようになりたい動作を、場面つきで1つ書く。「階段」ではなく「自宅の2階の寝室まで、手すりを持って一人で上がる」まで具体的になると良いです。
3. その動作を、月に1回、同じ場所から動画に撮る。毎日見ている本人と家族には、変化が見えにくいものです。1か月前の動画と並べると、変わった所と変わっていない所が分かります。
ご家族ができること
動作の手伝いは、減らす方向で考えます。 時間がかかっても自分でできる動作は、待ってあげてください。 どこまで手を出してよいかは、担当の療法士に「家ではどこまで手伝えばいいですか」と聞くのが確実です。
マヒリハと保険リハビリの違い
保険リハビリで筋力づくりを続けながら、保険外リハビリ(マヒリハ)で神経の働きに着目したリハビリを上乗せ。役割が違うため、併用される方が多くいらっしゃいます。対象は脳卒中のまひ、パーキンソン病などの神経難病の方。認定理学療法士が在籍し、手と足の両方に対応します。当施設と、ご自宅・ご入所施設への訪問も承ります。
よくある質問
Q. 発症から何年もたっています。今から始めても意味はありますか。
A. 発症から6か月以上たった700人をまとめた研究では、理学療法を受けた人たちの歩く速さと距離に小さな差が出ていました。腕では、発症から1年半ほどの224人が3週間で90時間の練習をした報告があります。どこまで変わるかは人によって違い、今の体の状態を見てからでないと言えません。
Q. 週に何回くらい必要ですか。
A. 「週何回なら十分」と言い切れる研究は見つけられませんでした。分かっているのは、変化が報告された研究はどれもまとまった量を行っていることです。マヒリハでは週1〜3回・1回80分で通う方が多いです。
Q. 介護保険のデイケアと自費リハビリは、両方使えますか。
A. 使えます。自費リハビリは保険の枠の外なので、介護保険のリハビリと並行して利用できます。ケアマネジャーさんにも伝えておくと、計画を合わせやすくなります。
Q. やめどきは、どう判断しますか。
A. 決めた動作が、自宅で、自分の体を悪くしないやり方で続けられるようになった時を推奨しています。少しずつ頻度を減らし、自分で保つ段階に移ります。
まとめ
保険のリハビリは、入院で150〜180日、外来で発症から180日が期限です。しかしその期限を過ぎた時期でも歩く力や腕の動きが変わったという報告があります。ただし、半年を過ぎてからは、より多くの量が必要になると考えます。「いつまで」は、できるようになりたい動作を具体的に1つ決めてみてください。
あわせて読みたい
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・退院後も『改善』が目指せる!自費リハビリって何?
参考文献
1. Ferrarello F, et al. Efficacy of physiotherapy interventions late after stroke: a meta-analysis. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2011;82(2):136-43. PubMed
(発症6か月以上の脳卒中、15のランダム化比較試験・700人のまとめ。歩く速さ0.05m/秒、距離20mの差。日常動作の差は有意でない)
2. Hornby TG, et al. Clinical Practice Guideline to Improve Locomotor Function Following Chronic Stroke, Incomplete Spinal Cord Injury, and Brain Injury. J Neurol Phys Ther. 2020;44(1):49-100. PubMed
(発症6か月以上で歩ける人が対象の診療指針。中〜高強度の歩行練習を強い根拠で推奨。大きな介助が要る人には当てはまらない可能性を著者が明記)
3. Ward NS, et al. Intensive upper limb neurorehabilitation in chronic stroke: outcomes from the Queen Square programme. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2019;90(5):498-506. PubMed
(発症から中央値18か月の224人、3週間90時間。腕の点数の中央値26→6か月後37。比較する群のない成績報告)
4. Kwakkel G, et al. Effects of augmented exercise therapy time after stroke: a meta-analysis. Stroke. 2004;35(11):2529-39. PubMed
(20のランダム化比較試験・2,686人。発症6か月以内の17試験で日常動作に小さな差。慢性期の3試験では有意差なし)
5. Paolucci S, et al. One-year follow-up in stroke patients discharged from rehabilitation hospital. Cerebrovasc Dis. 2000;10(1):25-32. PubMed
(自宅退院した初発脳卒中157人の1年後。維持43.3%・改善23.6%・悪化33.1%。退院後リハビリは46.5%が実施。割り付けのない観察研究)
6. 保険の日数:厚生労働省「診療報酬の算定方法」「基本診療料の施設基準等」。
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