【専門家が解説】触れるだけで激痛?脳卒中後の謎の痛み「視床痛(CPSP)」の原因と治療法
ブログ監修者

脳梗塞Labo マヒリハ 柏の葉店店長 原田 涼平理学療法士 認定理学療法士(脳卒中)
脳梗塞Laboマヒリハ柏の葉店店長の原田です。地域でお困りになっている方や不安を感じている方を一人でも多く救えるよう、保険外だからこそできる量と質を担保したリハビリを行っております。リハビリをご希望の方はお気軽にご連絡ください。
こんにちは! 脳梗塞リハビリ専門施設「マヒリハ」の原田です🌞
脳卒中を発症された後、麻痺した手足に、こんな経験はありませんか?
「服が擦れるだけで、火傷のような激痛が走る」 「優しい家族のタッチでさえ、針で刺されるように痛い」 「冷たい風にあたっただけで、凍えるような痛みを感じる」
怪我をしているわけでもないのに、なぜか耐えがたい痛みが続く…。周囲に理解されにくく、「気のせいでは?」と思われてしまうことさえあるかもしれません。
その痛みの正体は、「脳卒中後中枢性疼痛(CPSP)」、通称**「視床痛(ししょうつう)」**と呼ばれる、脳卒中の後遺症である可能性があります。 今回は、この”謎の痛み”の正体と原因、そして痛みを和らげるための治療法や付き合い方について、専門家の視点から詳しく解説します。
脳卒中後中枢性疼痛(CPSP)とは?
CPSPとは、その名の通り、脳卒中によって脳自体が損傷したことが原因で生じる、慢性的で治療が難しい神経の痛みです。脳卒中患者の約1割が発症するとされ、発症時期も直後から数年後と様々です。
CPSPの痛みの特徴
CPSPの痛みは、一般的な「ケガの痛み」とは全く異なります。
- 痛みの種類: 「焼けるような」「凍えるような」「電気が走るような」「締め付けられるような」と表現されることが多い。
- アロディニア: CPSPの最もつらい特徴の一つです。通常は痛みを感じないような非常に軽い刺激(服の摩擦、シーツの接触、そよ風など)に対して、激しい痛みを感じてしまいます。
- 心理的影響: 絶え間ない痛みは、ご本人の気力を奪い、不安やうつ状態を引き起こす原因となり、リハビリへの意欲を大きく削いでしまいます。
なぜ「脳」が痛みの犯人になるのか?
なぜ、触れてもいないのに、あるいは軽く触れただけで激痛が走るのでしょうか。 それは、痛みの原因が、手足ではなく「脳」にあるからです。
私たちの脳には**「視床(ししょう)」**という、全身からの感覚情報(熱い、冷たい、触ったなど)が集まる”中央郵便局”のような場所があります。視床は、届いた情報を仕分けし、脳の適切な部署に送る役割を担っています。
しかし、脳卒中によってこの視床がダメージを受けると、”中央郵便局”は混乱状態に陥ります。 その結果、「触った」という普通の情報を「猛烈に痛い!」と誤って解釈してしまったり、何も情報が来ていないのに「痛い!」という信号を勝手に作り出してしまったりするのです。 これが、CPSPの痛みの正体です。つまり、脳の誤作動によって引き起こされる痛みなのです。
どう向き合う?CPSPの治療とセルフケア
CPSPの治療は、一つの方法で完治させることは難しく、様々なアプローチを組み合わせ、痛みをコントロールしながら生活の質(QOL)を向上させることを目指します。
① 専門医による薬物療法
まず知っておくべきことは、市販の痛み止め(非ステロイド系抗炎症薬:NSAIDs)は、CPSPにはほとんど効果が期待できないということです。CPSPの治療には、神経の異常な興奮を抑える特殊な薬が使われます。
- 抗うつ薬(三環系など): 痛みを伝える神経の働きを調整する作用があります。
- 抗てんかん薬(プレガバリン、ガバペンチンなど): 神経の過剰な興奮を鎮め、痛みを和らげます。
- オピオイドなど: 他の薬で効果がない重度の痛みに対して、医師の慎重な判断のもとで使用されることがあります。
② 薬だけに頼らない非薬物療法
薬物療法と並行して、以下のようなリハビリテーションや治療法も痛みの緩和に有効です。
- 理学療法・作業療法: 痛みを誘発しない範囲で、関節を動かしたり、優しいマッサージを行ったりします。
- 経皮的電気刺激(TENS): 皮膚に弱い電気を流し、痛みの信号が脳に伝わるのをブロックします。
- リラクゼーション・心理療法: 痛みはストレスや不安で増強されます。瞑想や深呼吸、カウンセリングなどで心の負担を軽減することも重要です。
③ 日常生活でできる工夫
ご自身やご家族が日常生活でできる工夫も、痛みの管理に役立ちます。
- 衣類を選ぶ: 肌触りの良い、柔らかくゆったりとした衣類を選び、刺激を減らす。
- 温度管理: 急激な温度変化、特に冷えが痛みの引き金になることが多いため、室温を一定に保ち、体を冷やさない。
- 活動のペース配分: 無理は禁物です。調子の良い日でも活動しすぎず、こまめに休憩を挟みましょう。
リハビリテーションとの付き合い方
「動かすと痛い」ため、リハビリに消極的になりがちですが、動かさないでいると関節が固まったり、筋力がさらに低下したりしてしまいます。 CPSPのリハビリは、痛みの専門知識を持った理学療法士などと相談しながら、「痛いけど、少し動かす」「今日はここまで」というように、無理のない範囲で段階的に進めることが非常に重要です。 何よりも、ご家族が「その痛みは気のせいじゃない、本当につらいんだね」と痛みを理解し、寄り添う姿勢が、ご本人の一番の支えになります。
【まとめ】
脳卒中後中枢性疼痛(CPSP)は、目に見えないため周囲に理解されにくい、非常につらい後遺症です。 しかし、それは決して「気のせい」や「我慢が足りない」からではありません。脳の損傷による、れっきとした体の反応です。
完治が難しい痛みではありますが、適切な薬物療法、リハビリ、そして日常生活の工夫を組み合わせることで、痛みをコントロールし、自分らしい生活を取り戻すことは十分に可能です。
一人で、あるいはご家族だけでこの見えない痛みと闘わないでください。 マヒリハでは、このような複雑な痛みに対しても、ご本人の心と体の両面に寄り添いながら、最適なリハビリをご提案します。どうぞお気軽にご相談ください
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