🧠 部位が変われば“症状”も変わる — 脳卒中発症部位別ガイド

〜知っておくと対応が変わる。家族にも職場にも伝えたいポイント〜

こんにちは、マヒリハの原田です🌞
脳卒中は「どこ」をやられたかで出てくる症状が大きく変わります。発症された本人だけでなく、ご家族や周囲の方が「その症状は部位に由来するんだ」と理解していると、対応がぐっと楽になります。今回は臨床でよく見る部位別の特徴を、わかりやすく解説します！

🧭 まず押さえるべき“脳の主要６領域”

脳は大きく分けて次の6つの領域に分かれます。どの領域が障害されたかで“得られる症候”が変わります。

1. 前頭葉（ぜんとうとう）

2. 頭頂葉（とうちょうとう）

3. 側頭葉（そくとうとう）

4. 後頭葉（こうとうとう）

5. 小脳（しょうのう）

6. 脳幹（のうかん）

以下、それぞれ「ここがやられるとこうなる」を具体的に説明します。

1）前頭葉 — 「やる気」「計画」「運動の出力」のアンカー

出やすい症状

• 意欲低下、無関心、行動の開始が難しい（発動性低下）

• 性格・社会行動の変化（衝動的、攻撃的、判断力低下）

• 上肢下肢の片麻痺（運動野が近接）

• ブローカ失語（言いたい言葉が出ない）※左前頭葉のとき

対応ポイント
短く明確な指示、段階を区切った目標、周囲の落ち着いた声掛けが有効。急かさないこと。

2）頭頂葉 — 「触る・位置・空間」をつかさどる分岐点

※左右で出方がガラッと変わります

左頭頂葉（＝言語や書字に影響）

• 失書（字が書けない）、失読（文字が読めない）

• 言語理解の一部障害（失語の一部）

右頭頂葉（＝空間認識に影響）

• 半側空間無視（左側の物に気づかない）

• 病的無関心／失認（麻痺側を自分のものと認めないことも）

対応ポイント
ラベルや視覚的な配置で環境を整える。無理に注意を引かず、段階的に訓練。

3）側頭葉 — 「記憶」と「言葉の理解」の倉庫

出やすい症状

• 新しいことを覚えにくい（前向性健忘）

• 過去の一部記憶喪失（逆行性）もあり得る

• ウェルニッケ失語（言葉は流暢だが意味が通じない／理解できない）※左側頭葉

対応ポイント
重要事項は繰り返し・視覚化して提示。スケジュールやメモでフォローを。

4）後頭葉 — 「見る」力の司令塔

出やすい症状

• 視野欠損（片方の視野が見えない）

• 物体認知障害（見えているが何か分からない）

• 距離感の誤認（転倒やぶつかりの原因に）

対応ポイント
視野欠損側から接近しない、環境のコントラストを高める（見やすい配置）などで安全確保。

5）小脳 — 「調整」と「バランス」のコントロールセンター

出やすい症状

• 目的指向的な動きがぶれる（小脳失調）

• ふらつき、千鳥足（酩酊歩行）

• 細かい作業が不器用に（筆記、ボタンかけが難しい）

対応ポイント
重心を低めにして安全練習、両手支持で練習、段階的な協調訓練が有効。

6）脳幹 — 「生きるしくみ」と運動の集合地帯

出やすい症状

• 意識障害、呼吸・循環の不安定化（重症化しやすい）

• 嚥下障害（むせ・誤嚥）や複合的な顔面・四肢の運動障害

• 両側の麻痺や複雑な眼球運動障害が出ることもある

対応ポイント
救急対応が最優先。安定化後は嚥下評価や呼吸リハビリが重要。

🔁 現場で知っておきたい“大事なこと”３つ

1. 外見だけで判断しない — 高次脳機能障害（注意、記憶、性格変化）は見た目に出にくく誤解されやすい。

2. 「どこの障害か」を知るだけで対応が変わる — 例えば半側無視には視覚的な配置工夫がすぐ有効。

3. リハビリは部位ごとに戦略が異なる — 運動訓練だけでなく、環境調整や代償戦略、家族教育が鍵。

✅ 最後に：家族・職場の方へ一言

脳卒中は「どこ」をやられたかで出現する困りごとが変わります。
「なんだか態度が変わった」「以前と違う行動が出る」と感じたら、それは症状であって本人の性格ではありません。理解と環境の工夫が、毎日の安心と回復の速度を大きく左右します。困ったら専門家に相談を——私たちマヒリハも一緒に考えます。