【認定理学療法士が解説!】パーキンソン病の認知障害
パーキンソン病の認知機能障害とは
パーキンソン病の認知機能障害とは、パーキンソン病の出現する様々な症状のなかでも、認知機能の低下により起こる障害をいいます。
元気に過ごしていても、年齢が進んでくると体中のあらゆる機能が少しずつ衰えていくものです。
認知機能とは、脳が指令をくだし、身体が実際に遂行するまでのシステムです。
具体的に、言語を適切に用いる、状況を正確に判断する、数を計算する、ものごとを記憶する、理にかなった考えに基づいて実行に移すといった能力をいいます。
パーキンソン病の方で、症状が進行するにつれて認知機能の低下がみられるケースがあります。割合としては全体の二割から三割の方々が該当し、程度が軽ければ「軽度認知機能障害」となります。
症状が進んだ状態では「認知症」と診断されることもあります。単なる「ものわすれ」なのか、軽度の認知機能障害あるいは認知症なのか、その線引きがむずかしい場合もありますので、医療機関で診断することが一番良いとされています。
パーキンソン病の認知機能障害の発症について
認知機能障害の発症については、年齢や症状の進行度合い、治療の効果などで、発症しやすいかそうでないかに個人差があります。
とくに発症しやすい危険因子は下記のとおりです。
- 発症してから年月が経っており、ご高齢である
- 四大症状のうち「振戦」が出現していない方
- ドーパミンを補う薬剤の効果があまり得られていない
- 運動機能に関する症状が進行している
- うつ状態や幻覚がある
- 嗅覚障害がある
認知機能は日々の積み重ねであり、目に見えるものではありません。身近にいるご家族などでも、注意していなければ異変に気づくのが遅れることもあるでしょう。初期(軽度)のうちは、パーキンソン病の治療を行っていても言及されないこともあります。
ある日突然に発症するというより、生活に支障が出て初めて思い当たるケースも多いでしょう。認知機能に関する検査は、医療機関の中でも神経心理学の分野が専門となります。認知症では、脳波の波動やMRIにより脳の記憶を司る部分に萎縮がみられるかといった要素から診断されます。
パーキンソン病の認知機能障害の特徴
パーキンソン病の認知機能障害の特徴としては、頻度の高い症状に「遂行機能の障害」があります。その他特徴的な症状についても解説していきます。
①遂行機能の障害
遂行機能とは、漠然と思い立ったことを具体的に順序立てて計画し、実行に移すという一連の行動です。
状況に応じて計画を変更、あるいは中止するという問題解決のための判断も必要です。パーキンソン病の認知機能障害では、その能力が乏しくなります。
②記憶障害
昔から覚えていることの中から必要な記憶を呼び覚ます、あるいは直近に見たもののことを一時的に記憶させるといった、情報を頭に入れる(記録する)作業が、パーキンソン病の認知機能障害ではできにくくなります。
③視空間機能障害
視覚的に見えている情報や、身の回りの空間を認識する機能が弱くなります。そのため、複数の方と面会した際に、個人それぞれの顔が混乱してしまう、歩いてきた道を戻ることがむずかしい、広い建物内での位置関係がつかめないといった場面が頻出します。
④社会的認知機能の低下
パーキンソン病の認知機能障害では、他人との関係性を築くのにも影響が出てきます。目の前にいる方が「不快な表情」をしているのか、「怖がっている」のか、その識別ができないことがあります。
言語がなくても、表情を見ただけで何を物語っているのかを理解するシーンは日常的にあります。しかし、パーキンソン病の認知機能障害では、その能力が弱くなるため、人間関係が円滑にいかなくなる傾向があります。
パーキンソン病の認知機能障害の対処法
対処法として、まず周囲の方々が、できるだけ早くその兆しに気づいてあげられることが大切です。
早めに対処するほど、進行を遅らせることが有効となります。次のようなことが、よくある兆しです。
・何かの行動をする時、計画的にできなくなった
・新しい経験やものごとが頭に入らなくなった
・趣味など好きなことや人に興味を失っている
・家事、仕事の段取りが悪くなった
・大切な物の保管場所がわからなくなり「誰かにとられた」と思ってしまう
パーキンソン病の治療では、ドーパミンを補うのに薬剤療法が適用されます。初期の頃から服用し、進行の程度にあわせ薬の量を増やしたり変えたりしていきます。しかし、認知機能障害ではなるべく薬は使わずに、トレーニングや予防することで対処するのが適切です。
パーキンソン病の認知機能障害は、脳内の働きが大きく関与してきます。脳へアプローチする訓練や行動が予防となります。また手先を使った作業も良いといいます。下記に対処法をまとめてみました。
①脳のトレーニング
「計算ドリル」やパズル、トランプやオセロゲーム、囲碁といった考えながらするトレーニングを、継続的にするのがよいでしょう。毎日、負担にならない程度ずつ、楽しんでできるものが効果的です。
②読み書き
新聞や好きな作家のエッセイ、詩などを声に出して読むと、脳への刺激となります。また、それを味わいながらノートに綴ります。苦痛でなければ、ご自分の日記をつけてみましょう。早くする必要はありませんので、ゆっくり頭を働かせながら書いていきます。
③新しいことにチャレンジする
楽器や手芸、工作、絵画といった趣味などで、過去に経験のない分野に挑戦してみましょう。例えば英会話やスポーツなど相手を必要とすることであれば、コミュニケーションも図れます。まずは「大人ぬりえ」や折り紙など、単独でできる手軽なものですと負担になりません。
まとめ
パーキンソン病は病状がゆっくり進行するため、どのような生活をおくるかで、数年先に違いが出てきます。
何となく過ごすのでなく、認知機能障害の予防となるようなことを意識的にして行くことが改善につながります。
ブログ監修者
脳梗塞Labo マヒリハ 柏の葉店店長 原田 涼平理学療法士 認定理学療法士(脳卒中)
脳梗塞Laboマヒリハ柏の葉店店長の原田です。地域でお困りになっている方や不安を感じている方を一人でも多く救えるよう、保険外だからこそできる量と質を担保したリハビリを行っております。リハビリをご希望の方はお気軽にご連絡ください。
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