【認定理学療法士が解説!】脳卒中の後遺症「身体失認」って何?

こんにちは!

マヒリハの佐藤です!

脳卒中後に、寝返りの際に、麻痺側の手を置き去りにしてしまった経験はありませんか?

それは、もしかしたら『身体失認』という後遺症の1つかもしれません!

そこで今回は、『身体失認』について解説していきます。

落ち込む高齢者

身体失認とは?

身体失認とは空間的な自己の身体像に関する知覚や知識の障害のことを指します。

簡単に説明すると、自分の身体がどこであって、どうなっているかわからなくなってしまう病気です。

このことを総称して半側身体失認と呼びます。

半側身体失認は主に脳卒中(右半球)の障害によって生じます。

左側の麻痺を否認したり(「病態失認」)、麻痺は無いにもかかわらず左側の身体を使わなかったり(「不使用」といいます)、左側の身体の喪失感を訴える場合などに分けられます。

「病態失認」は軽い意識障害のある場合にみられることもあります。

しかし、意識障害がなくてもこの症状は出現します。

【日常生活での現れ方】

理解すること

麻痺の存在を否認したり、「私は歩ける」と言い張ったりします。

また、左側の不使用では、通常であったら自然に動きがみられる左上肢を動かすことがなく、なんでも右側の上肢を使う症状が認められます。

【診察場面での現れ方】

まず、麻痺の否認についてです。

医師からの質問に対して麻痺の存在を否認したりします。

あるいは、とても歩行ができないのに「私は歩ける」と言い張ったりします。

このような場合は「どこか調子の悪いところがありますか」という質問や、「手足は動きますか」「麻痺はありますか」などと質問するのがよいと言われています。

随伴症状としては、左半身の感覚障害、左半側空間無視などがあります。

片麻痺に対して否認はしないものの、『その存在に対して無関心』であったりする場合もあります。

次に身体の不使用についてです。

この症状は、左側の麻痺がない場合でも左側の上肢を使おうとしない、あるいは通常であったら両上肢を使用するような動作を行う際に、左側の上肢を使用せずに右側の上肢だけを使うといった症状を指します。

また左側の身体の喪失感や異物感を訴える場合があります。

麻痺している上肢を自分のものと認めなかったり、麻痺している上肢を他人のもの(例:先生の手)であるといったり、麻痺している上肢以外にもうひとつ別の幻影肢があるというなどいろいろな場合がありえます。

【診断のポイント】

半側身体失認は右側の大脳半球の損傷と関係が深い症状であると考えられています。

上記のような症状が認められ、病巣が主に右側の半球にある場合、そう診断してもよいでしょう。

【リハビリテーションの方法】

診察場面での現れ方に記されているような、『患側の手足の不使用』や、『片麻痺の否認』、『麻痺側の手足に関する異常知覚』がどのような状況で認められるのかが重要です。

特に片麻痺の否認、麻痺側の手足に関する異常知覚などは患者さんの意識がボーっとしているときによく起こります。

したがってこのような症状はしばしば変動します。

また、急性期には比較的多く観られ、経過とともに消失する傾向があります。

これらの症状は、医師や家族があらためて尋ねないと見逃されることが多く、患者さんは自分の手足が健常であるかのように振る舞うため、転倒の危険があります。

診察時に「どこか動かしづらいところはありますか」「麻痺している手足はどちらですか」のように病態に関して確実に質問することが重要です。

まとめ

病気の存在に気づくことが身体失認への第一の対応といえます。

脳卒中の後遺症は麻痺以外にも様々な症状があります。

安全に生活するためにはそれぞれの症状と疾患の理解を深めておくことが大切です!