【脳卒中後の肩の痛みと亜脱臼…そのままにしないで！】リハビリ専門職が教えるケアと回復への道

こんにちは！マヒリハの原田です。

脳卒中の後遺症で多い悩みのひとつが、「肩の痛み」です。特に、麻痺側の肩がズーンと重くて痛い、あるいは服を着替えるときや車椅子から移るときにビリッと痛む。

こうした肩の痛み、実は“亜脱臼”が隠れているケースが多いんです。

今回は、脳卒中後の肩関節の痛みと亜脱臼に対するリハビリテーションの実際について、現場の視点からわかりやすくお伝えしていきます。

なぜ、脳卒中後に肩が痛くなるのか？

脳卒中後のリハビリでよくあるのが、 「まだ動かせないから何もしてないのに、肩が痛い」 という相談。

それ、関節がずれている（＝亜脱臼）状態で放置しているサインかもしれません。

脳卒中で運動麻痺が起こると、肩周りの筋肉の緊張が極端に下がる（弛緩）or上がる（痙縮）ことで、腕の重みに耐えきれず上腕骨が下にずり落ちてしまうことがよくあります。

この状態が長く続くと、肩関節の炎症（肩峰下滑液包炎や関節包炎）が起き、痛みや動作制限が悪化していきます。

リハビリでやるべき３つのこと

①「ポジショニング」―守ることから始める

亜脱臼の肩には、まず「守る」という意識が必要です。

・寝ているときは肩の下にタオルやクッションを入れて支える
・車椅子ではひじ置きにきちんと腕を乗せる
・三角巾やアームスリングを長時間使いすぎないように注意

守りながら使うバランス感覚がリハビリの肝になります。

②「肩甲骨アプローチ」―いきなり腕を動かさない！

麻痺側の腕をリハビリで動かす際、「いきなり肩関節を上げる」のはNG。

まずは肩甲骨の可動性（動きやすさ）を高めることが先決です。

こんなアプローチをします：

・ベッド上で肩甲骨の内外転・挙上・下制を丁寧に誘導
・麻痺側でも背骨を意識して正中に寄せる意識づけ
・痛みのない範囲での肩甲骨と上腕骨のリズムを整える運動

「肩甲骨は腕の土台」です。ここが固まっていると、上肢の運動は始まりません。

③「重力からの解放」―座位・立位でも“持たせない”工夫を

肩関節は、重力に対して非常に弱い構造です。特に麻痺側は“支える筋肉”が働かないため、ぶら下がるだけで痛みが強くなります。

対処法：

・リハビリでは机やボールなどで腕を支持してあげる
・肘・前腕支持の姿勢練習から始める
・立位での訓練でも非麻痺側で支える＋姿勢の安定を重視

無理に動かすより、「楽に支えてあげること」が機能回復への近道です。

よくある誤解と、やってしまいがちなNGリハビリ

❌「痛いけど、動かさなきゃダメでしょ？」

→ 痛みが強いときは“守りながら動かす”が鉄則！無理に可動域訓練をすると炎症が悪化します。

❌「三角巾でずっと吊っていれば安心」

→ 長時間吊っておくと肩関節が固まり、逆に動かしづらくなることも。使用時間とタイミングを調整するのが大事です。

❌「寝ているから肩は大丈夫」

→ 寝た姿勢でも肩が“前下がり”になっていれば負荷がかかっています！常に“位置”を意識した支え方が重要です。

実際の回復ストーリー【リハビリ現場より】

ある脳出血後の男性。入院から２週間、肩にズーンとした痛みが現れました。亜脱臼が見られ、肩甲骨周囲筋の筋緊張が低下していました。

私たちは以下を実施：

・毎日、10分間の肩甲骨モビライゼーション
・肘支持での座位訓練＋前方リーチ
・肩の保護ポジショニング指導を家族に徹底

すると、２週間で痛みが軽減し、３週目には服の着替え時の痛みがほぼ消失。本人からも「肩が軽くなった」との声がありました。

まとめ｜「守って、整えて、動かす」がリハビリの順番

脳卒中後の肩の痛みと亜脱臼は、「動かす前に整えること」が大切です。

リハビリは、闇雲に動かすことではありません。
痛みなく、安全に、その人らしく使えるように“準備する”ことが目的です。

だからこそ、肩関節のケアには「守る→整える→支える→動かす」というリハビリのステップが必要です。

肩は“我慢”しない関節。

痛みが出る前に、出た後も、「見逃さず、放置せず、丁寧に整えてあげること」が、回復への最短ルートです。

肩の痛みでリハビリがつらい時こそ、遠慮なく専門職にご相談くださいね。

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